『勝手にしやがれ 4Kリストア版』『カモン カモン』

5/3 ヒューマントラストシネマ有楽町で『勝手にしやがれ』 TOHOシネマズ日本橋で『カモン カモン』

勝手にしやがれ』 ジャン=リュック・ゴダール監督の1960年公開映画。スクリーンで観るのは初めてだったけれども、ヌーベルバーグの記念碑的作品と言われるだけあって当時としては本当に画期的な映画だったのではないかとあらためて感じた。全編通してジャン=ポール・ベルモンドの魅力に圧倒される。決していわゆる誰が見ても男前というタイプではないけれど、惹きつけられずにはいられない愛嬌とユーモアに溢れていて「ルパン三世」のモデルになった一人というのも納得。ベルモンド演じるミシェルとジーン・セバーグ演じるパトリシアの会話も本当に洒落ていて、ケチな詐欺師のミシェルのパトリシアには騙されても裏切られても本望という少年のような純愛がベルモンドの繊細な演技によって観客に届けられる。ほかのキャストでのリメイクなんてあり得ないという映画があるとしたらこれはまさにそんな一本だと思った。

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『カモン カモン』 母親の介護を通して意見が対立し疎遠になっていた妹から突然甥のジェシーの面倒を見るように頼まれたジョニー。子供と一緒に暮らすという現実によって大人たちの意識が変わっていく様が描かれる。ジョニーがラジオの仕事でインタビューしている子供たちの言葉が映画の中で挿入されるのだけど、そこで繰り返し語られるのは「他者の意見にも耳を傾けよう」「お互いの違いを認め合おう」ということで、これはそのままジョニーと妹ヴィヴの関係、ジョニーとジェシーの関係にも当てはめて受け止められる。子供を預かったことでジョニーは初めていつも完璧であることを求められる「母親」という立場が負わされている責任を実感し、大人によって鬱陶しいものとされがちな子供の言葉や行動がいかに掛け替えのないものかを知る。ジェシーの存在によってジョニーが家族との繋がりを結び直し、自身の人生を見つめ直す姿に心が暖かくなる映画だった。ジョニーを演じたホアキン・フェニックスの受けに徹しつつ繊細な感情が伝わってくる演技がとてもよかった。

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