DULL-COLORED POP『プルーフ/証明』

3/7 王子小劇場で DULL-COLORED POP『プルーフ/証明』 作:デヴィッド・オーバーン 翻訳・演出:谷賢一

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<公式サイト掲載のあらすじ> シカゴ、冬。天才数学者・ロバートは103冊のノートを遺して世を去った。家に引きこもり人を寄せ付けようとしない次女キャサリンと、ロバートの研究を引き継ごうと家を訪れる青年ハル、キャサリンの身を案じる長女クレア。3人はやがて1冊の「証明」が書かれたノートを発見する。「数学の歴史が始まって以来、あらゆる数学者たちがずっと証明しようとしてきた」「おそらく不可能だろうと思われていた」証明。ロバート最後の偉業と思われるその「証明」について、キャサリンが驚愕の事実を打ち明ける。この証明は……。

 

演出もコンセプトも異なる3チーム3バージョンの上演ということで、私はCチーム(柴田美波、竪山隼太、水口早香、古谷隆太)の回を観てきた。2000年の初演後、何度も繰り返し上演されてきたアメリカ現代劇の最高傑作と言われる有名戯曲だそうで、私は今回が初見。相手が言い終わる前に言葉尻にかぶせるようにして互いに投げつけ合う言葉の応酬は辛辣で容赦がなく、聞いていて胸が苦しくなるような会話劇だ。キャサリンを演じた柴田美波の今回の演技はちょっとエキセントリックに過ぎて私は好みではなかったけれど、ハル役の竪山隼太は観客を味方につける愛嬌があってよかったと思う。父と娘、姉と妹の関係に、父の教え子である青年の存在が触媒となって、家族間の物語を追ううちに、男社会の学界の中で才能があっても女性であるという理由で低く見られること、親の介護のために自分の夢を諦めること、相手の苦悩や葛藤に思いが及ばないことなど、現代を生きる人間が抱えているさまざまな問題が炙り出されていく。時代を超えて訴えかけてくる強さを持った戯曲であり、また俳優がどう演じるかによって印象が大きく違っただろうと思うと、3チーム3バージョンはなかなか良い企画なのではないかと思った。