ゴジゲン『朱春』

4/8 ザ・スズナリでゴジゲン『朱春』 作・演出:松居大悟

f:id:izmysn:20210411104010j:plain
f:id:izmysn:20210411104023j:plain

朱夏”という言葉があるそうだ。青春(青い春)の次にくる朱い夏は、いわゆる壮年と呼ばれる年代を指すのだとか。この作品では、30代もすでに半ば、にもかかわらず、いつまでも春の夢を見続けている男たちを「朱春(スバル)」という造語で表している。鳴かず飛ばずで15年、解散を決めた6人組お笑いユニットの最後の一夜。群馬の温泉宿で最後のステージを終えたあと、解散のお知らせをなかなかアップできないのは送信ボタンを押したら自分たちの15年が本当に終わってしまうから。解散するしかないと決めたのに、その瞬間を一秒でも先に延ばしたい、その悪あがきが哀しくも可笑しく、迷いや寂しさや不安を抱えた自分を自分で抱きしめるシーンには泣けた。宿の隣室で大騒ぎする大学生たちが、いつしか当時の自分たちの姿になり、現在と過去が入れ替わりながら描かれることで、この6人の始まりと終わりを観客はたしかに見届けるのだ。ゴジゲンは2018年から観ているけど、男同士のわちゃわちゃした会話の面白さはもちろん、今回は個々の役者としての良さ、掛け合いの間の上手さがとても印象に残った。そしてゴジゲンの2017年公演「くれなずめ」は観られていないので、今月公開される映画版を楽しみに待とうと思う。