『白昼夢』

3/22 本多劇場で『白昼夢』 作・演出:赤堀雅秋
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「8050問題」に中年の「引きこもり問題」を加えて、高齢で持病もちの父親(風間杜夫)、12年間家から出ていない次男の薫(荒川良々)、引きこもり支援団体に頼る長男の治(三宅弘城)という家族の夏・秋・冬・春が実家の居間を舞台に描かれる。支援団体の別府(赤堀雅秋)と自身も引きこもり経験者という石井(吉岡里帆)は昨今言われるような悪徳業者ではなく、素直にというか単純に「ご家族のお力になること」を考えている人たちだ。
風間杜夫がさすがの存在感。荒川良々はいつものお笑い担当的なイメージを封印して非常にリアルに引きこもり中年の苛立ちや投げやりな諦めを表現していた。三宅弘城はいわゆる辛抱役で、父親と弟が支援団体の二人と打ち解けていく中でひとり疎外感を感じていく様子を、微妙な表情や佇まいから立ち上げて上手いと思った。冬の場面で薫を絞め殺そうとした治が我に返り「空があんまり青かったから、馬鹿にされたような気がして」という台詞は、ここだけ詩的というか芝居のトーンと違う気がして、何かの引用なのかと思ったけどそういう事でもなかったようだ。
夏には犯罪者になって死刑になるとか言っていた薫が、春になって自立し一人暮らしを始めるという展開は、最後に父親の死という影は射すものの、ちょっと簡単に過ぎるように感じた。そして秋から冬には妻子ある治と付き合っていた石井が、それはバツ3にもなるだろうというダメ男が今の彼氏で、リストカットも止められないというのは救いがなく「石井さん大丈夫か」と行く末が気になった。