『あのこは貴族』

3/10 シネ・リーブル池袋で『あのこは貴族』

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 東京の開業医の家に生まれ育った「箱入り娘」の華子(門脇麦)。富山の地方都市出身で「上京組」の美紀(水原希子)。ポスターに「違う階層(セカイ)を生きている」とあるけれど、彼女たち2人の関係だけではなく、この映画には様々な形の線引きが描かれている。華子が出会って婚約する幸一郎(高良健吾)は、代々政治家を輩出する良家の子息で、華子の友人いわく「私たちより家柄は上」で、幸一郎の母親はあからさまに華子を見下している。美紀は猛勉強して入学した慶應義塾大学で、下から上がってきた内部組と受験で入った外部組の違いを実感する。お正月に帰省して同窓会に顔を出せば、地元に残った者と都会に出た者との感覚のズレは明らかだ。田舎に帰る気にはなれず、今の仕事が生きがいというわけでもなくただ東京での生活を続けている美紀と、お嬢様育ちで世間知らずの華子。住む世界が違うというのは、価値観の違い、金銭感覚の違いという事なのだと思う。美紀から見た華子は「とてもかなわない、本物のお嬢様」だけど、華子はそれが当たり前という環境で育ってきたから自分が特別だという気持ちは持っていない。華子は華子で息苦しい日々を過ごしているのだけど、美紀にはそんな悩みは想像もつかない。異なる環境で生きてきた2人の人生が幸一郎という存在を通して交差することで思いもよらなかった新しい世界が拓けていくのだけれど、それぞれが新しい一歩を踏み出したその時そばに居るのが、旦那でも恋人でもなく学生時代から心を許しあった女友達というのが良いと思った。なにより主役の2人を演じた門脇麦水原希子が本当に良かった。